■ TYPE X1 3,5/35


表記:TYPE X1 F.35 1:3,5
最短撮影距離:1m
最小絞り:16
マウント:外爪バヨネット
構成:3群4枚
製造・年代:P. Angenieux Paris, 1948
フィルタ径:S40,5x0,5
重量:145g
特記事項:コーティング
 パリのピエール・アンジェニューと云えば今さら断るまでもなく、エキザクタやアルパ、シネカメラのアリフレックスなどにレンズを供給してきたフランスの著名な光学メーカーだ。1950年に逆望遠レンズを開発、その商品名レトロフォーカスは一般名詞にまでなっている。早くからズームレンズにも傾注し、その分野では定評があったが、ごく最近、生産を停止したと伝えられる。
 このタイプX1レンズは、同社が第2次大戦直後に供給していたコンタックスマウントレンズのうちのひとつで、構成は穏当なテッサータイプ。薄いブルーのコーティングが施されている。アンジェニューからはほかにタイプY1の90ミリレンズがコンタックスマウントで出ていたようだが、現物を目にしたことはない。
 テッサー型の35ミリレンズは、古くは1930年のエルマー3,5/35、戦後にはWニッコールやシュナイダーのクセナゴンなどがあった。テッサー本家のツァイスはと云うと、ゾナーの変形である初代ビオゴンとヘラーを戦前に出して、F値の暗いバージョンはオルトメター型を採用した。戦後も東はビオメター、西がプラナーと、ひたすらテッサーを避けたようなふしがある。テッサーで明るい広角レンズを作るのには無理があるとみたのだろうか。20世紀も終わりになってようやくテッサー型の35ミリレンズが出ている(T proofなど)。
 それにしても一体どういう評判がどこから立ったのか知らないが、アンジェニューのレンズは変に人気があってどれも市価は高い部類に入る。絞り開放ではとにかく柔らかい。というよりもソフトフォーカスレンズだ。個体差なのかもしれないが、ひたすら滲む。絞っても見た目の深度はかなり浅く、およそパンフォーカスレンズとしては使えない。遠景よりも中近距離の被写体に向いたレンズだろう。


2005 Harajuku, Tokyo. F8. ILFORD DELTA 400 PROFESSIONAL


Photo and Text (C)2005 Yoshitane Takanashi inserted by FC2 system