■ Biogon 2,8/35 prewar


表記:Biogon 1:2,8 f=3,5cm
最短撮影距離:0,9m
最小絞り:22
マウント:外爪バヨネット
構成:4群6枚
製造・年代:Carl Zeiss Jena, 1937
フィルタ径:A42/S40,5x0,5
重量:285g
特記事項:なし
 最近色々と箸にも棒にもかからぬレンズを玩んでいて出番がなかったのだが、改めて持ち出してみるとこれは本当にステキなレンズだと思う。四隅がどうこうと下らないことを云わなければ、開放からしっかり写る第一級の実用レンズだ。独特の柔らかさのある描写は他の35ミリレンズでは得難いものがある。余りにも魅惑的な後玉のおかげで極東の新型RFコンタックス、つまりベッサR2Cには装着できず、最新技術の恩恵を受けることはできないのだけれども、このビオゴンこそはクロームコンタックスに最もよく似合う。もちろん4群構成のためかさすがに抜けは劣るし、カラーフィルムを使うとそれと判るくらいに色が濁る。それを嫌うなら戦中期のTコーティング版を探すのが良い。これは割合いに見かけることの多い玉である。ノンコーティング版は使用時には1段くらい余分に露出を与えるのがいいようだ。作例はいずれもコーティングなしビオゴンでのもの。
 構成は所謂ビオゴンタイプとは違いゾナーの変形であって、特許書類に記載された図では第2群は接合トリプレットだった。これは特許請求第2項を図示している。F2,5のプロトタイプが作られたとも云われるがこれは怪しい。量産品では第2群が請求第1項に基づく接合ダブレットになって、口径比1:2,8である。ツァイスのパンフレットに掲載された断面図を誤解して、一般には4群7枚構成と思われているが、一番後ろのエレメントはダブレットではなく単エレメントであり(これは特許上はっきりしてる)、6枚構成である。戦後イエナ製の鏡胴は少々安っぽい造りに変わって、黒い絞り環先端とまっすぐな鏡胴周りとで判別できる。
 のちに幾つかのコストダウンタイプが企図されたように、高価な35ミリレンズではあったものの、230ライヒスマルクというのはF1,5のゾナーやハチゴよりも3割安く、1万本以上が生産されたことが判っている。コンタックス用35ミリレンズとしては、このビオゴンに先立ってゲルリッツのフーゴ・マイヤーからマクロプラズマートF2,7が供給されていたらしいが、市場ではほとんど見かけることはない。
 戦後の新型コンタックス(a型)には後玉が収まりきらず、同じビオゴン35ミリとはいっても新設計となってしまったのは残念だ。とはいえ、わたくしのようなクロコンマニアには実質関係のない話ではある。

2004 Tsukiji, Tokyo F2,8 ILFORD DELTA 400 PROFESSIONAL

2003 Aoumi, Tokyo F5,6 TRI X


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