■ Biometar 2,8/35


表記:Biometar 1:2,8 f=35mm T
最短撮影距離:0,9m
最小絞り:22
マウント:外爪バヨネット
構成:4群5枚
製造・年代:Carl Zeiss Jena, 1949
フィルタ径:A42/S40,5x0,5
重量:110g
特記事項:Tコーティング
 ビオメターと云えば中判用レンズ、そして伝説のローライフレックス2,8Bに搭載された東独ツァイスの誇る名玉で、本レンズはその35ミリ判用、ローライフレックスBと同じくらい市場に出回らない珍品(推定1.500本)の類に入る。珍品と雖もひとたび手にした以上、雨の日だろうが雪の日だろうが撮影に供するのがわたくしの流儀だ。おまけのこの玉は大変写りが良い。使うなって云うほうに無理がある。
 日常コーティングされていないレンズを使っている身からすると、これはTコーティングされていることもあって、開放から結構コントラストの高い描写をするように感じる。周辺部の描写も破綻なく全体としてシャープだ。もちろんビオメターの名にこびりついてしまった感のある、あのどことない暖かさも有っている。作例のようなぬめっとした質感も良く捉えていると思えるがどうか。鏡胴の造形も戦前の広角レンズに準じて、吸い込まれるようなすり鉢状の開口部といい、絞り環の操作のしやすさといい、実にすばらしいものだ。入手しにくいことを別にすれば、戦前のビオゴンと並んで極めて実用的な35ミリレンズと云える。西独コンタックス用の35ミリレンズ(新ビオゴン)が供給されるまでの場つなぎとも云われ、そのせいか生産数の少ないのが返す返すも残念だ。
 東独イエナの製造のため、巷間マウント部の摩耗がよく取り沙汰されるけれども、戦後すぐのイエナ製コンタックスレンズと違ってその心配はほとんどない。それにどうせ35ミリなのだから、多少のずれは気にしないほうが精神衛生上よろしかろう。珍品の割には出てくる時は比較的安いから、コンタックスファンなら見かけ次第抑えておくのが吉だろう。


2004 Tsukiji, Tokyo F5,6 ILFORD DELTA 400 PROFESSIONAL


Photo and Text (C)2004 Yoshitane Takanashi inserted by FC2 system