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Herar 3,5/35
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表記:Herar 1:3,5 f=3,5cm |
最短撮影距離:0,9m |
最小絞り:22 |
マウント:外爪バヨネット |
構成:2群5枚 |
製造・年代:Carl Zeiss Jena, 1938 |
フィルタ径:A42/S40,5x0,5 |
重量:135g |
特記事項:なし |
ジルヴェスター・フーバー博士の設計により1935年11月に特許取得されたヘラーが生産に入ったのは、ビオゴンに遅れること2年の1938年と推定される。知られている限りヘラーと云う銘のレンズは9種類あって、3,5サンチから13,5サンチまで当時のコンタックスレンズの基本的な焦点距離をカバーするラインナップだった。ツァイスの至上命題として空気境界面僅かに4面という拘束条件下に設計されたこのレンズ、確かに抜けも良く色再現性も悪くない。しかしたった2群で所期の性能を求めるのには無理があったと見え、おまけにTコーティング技術が実用化されたせいもあって、生産ラインに乗ったのはこの1種のみ、それも僅かに1.000本あるいは500本の生産数だ。見た目では製作のより簡単そうなF2,8のほうは、結局生産されなかったと思われる。
本レンズはビオゴンと同じ鏡胴に入っており、オルトメターと同様、開口部はすり鉢状にくぼんでいるので、フードなしでもさほど支障を感じないが、やはりノンコートレンズの宿命か、光線条件にひどく左右されてしまう。作例は半逆光で画面左上の外に強い光源(太陽)があるため、中央の建物上部にそれと判るフレアが出ていたのだが、プリントでごまかしてある。順光ではそんな面倒な作業は必要ない。
少し絞ってやれば周辺まできちんと解像する優秀なレンズなのだが、量産されなかったのは先述の理由のほか、現在でも通用する初代ビオゴンよりそれほど安価でなかったからかもしれない。ライカネジマウント版およびTコーティング版も少数存在する。
ヘラーの情報は戦前日本にも入ってきており、明光社の月刊小型カメラ誌ではその将来性を有望視していたものの、ほぼ同時期のスマクラ博士のコーティング技術発明により、その未来は早くに断たれていたと云うべきだろう。
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2004 Urayasu, Chiba F5,6 ILFORD DELTA 400 PROFESSIONAL |
Photo and Text (C)2004 Yoshitane Takanashi