■ Sonnar 2/85


表記:Sonnar 1:2 f=8,5cm T
最短撮影距離:1,15m
最小絞り:22
マウント:外爪バヨネット
構成:3群7枚
製造・年代:Carl Zeiss Jena, 1943
フィルタ径:A51/S49x0,5
重量:335g
特記事項:Tコーティング

表記:Sonnar 1:2 f=85mm T
最短撮影距離:3'6"
最小絞り:22
マウント:外爪バヨネット
構成:3群7枚
製造・年代:Zeiss Opton, 1952
フィルタ径:A51/S49x0,5
重量:405g
特記事項:Tコーティング

 舞台、報道、スポーツ、そしてポートレイト撮影にお誂え向きの1本、というのが当時の売り文句だった通称「ハチゴ」ゾナー。ドイツ語のパンフレットでは舞台、スポーツ、報道の3つで、片や英語版では報道、舞台、ポートレイトと、それぞれ微妙にターゲットが異なっているのが面白い。残念ながら戦前にハチゴゾナーで撮られた傑作とやらはほとんど(と云うかまったく)知られておらず、あの著名な(ほぼ唯一の)コンタックス使いロバート・キャパですら、5サンチのゾナー、それもF2のほうを専らにしていた。たぶん、それらの原因はこの巨大なレンズの法外な販売価格にあったと思われ、1930年代の後半で330ライヒスマルク、これにファインダーやフードを揃えると旧式のコンタックスがレンズ付きで買えてしまう。だから皮肉なことに、ハチゴゾナーが大(?)活躍しているのは、21世紀のこの時代なのかもしれない。
 当時の大口径レンズにありがちな開放での柔らかい描写は本レンズでも同様で、それが人物撮影に好まれたのかもしれないが、半絞りも絞ってやればすぐ鮮鋭さを顕わす。唯一の欠点はその重さが黒鏡胴版で600グラムを超えることではなくて(クローム版ではだいぶ軽くなったが)、写界の近くに強い光源があると中央に盛大なフレアが出ることだ。これは構成が3群6枚から3群7枚に変更されてから幾分軽減されたものの、完全に解消されるのは一眼レフのコンタレックス用になってからだった。その点を除けば優美な描写をする優れたレンズのひとつだ。
 ちなみに7枚構成になったのは従来云われているような戦後のオプトン版からではなく、戦中期(250万番台付近)からである。戦後西独製ハチゴゾナーの鏡胴デザインは、のっぺりしていて安っぽい感じがするのは残念だ。西独ツァイスでの生産数は不明だが、戦前戦後のイエナ製だけで1万5千本内外と推算される。これは13,5サンチレンズについで多い。


2002 Yoshimi, Saitama F8 TRI X


Photo and Text (C)2004 Yoshitane Takanashi inserted by FC2 system