◆ RFコンタックス用35ミリレンズ

     距離計連動式コンタックスの焦点距離35ミリレンズ群である。公式に生産発売されたのはこの6種類で、ほかに見つかったとしても恐らくは改造品だろう。その手の改造は特に戦後間もない時期に当のツァイス職員らが行なっていたという話もある。また、ほとんどのライカネジマウントツァイスレンズは、その時期の非公式改造品であることも明らかになってきている。

    Biogon 2,8/3,5cm (1936)
    Orthometar 4,5/3,5cm (1937)

     1936年も終わり頃に発売された最初の35ミリレンズで、設計はおなじみルートヴィヒ・ベルテレ。特許請求項目は3項あって、エレメント配置は(1)1-2-2-1、(2)1-3-2-1、(3)1-3-2-1であった。量産品は第1項に基づく4群6枚構成である。当時のコンタックス用レンズとしては珍しい4群構成のため、コーティングのない通常の型だと発色は濁る傾向にある。特徴は何と云ってもその大きな後玉で、シャッター幕ぎりぎりのところまで張り出している。また、なぜか絞り羽が5枚と、この当時のレンズとしては非常に少ない。2群と3群の間隔が狭く、より多くの枚数を使えなかったのだろうか。

     ビオゴンの廉価版として企図されたと云われる。設計はヴィリー・メルテ。歪曲の少ない製版・航空写真用レンズのコンタックス版で、その利点はともかく開放では甘い。これも4群6枚構成で、戦前のコンタックスレンズで4群以上あったのはほかにビオターを数えるだけだ。曇ってさえいなければ比較的良く写るが、状態の良いオルトメターは余り見かけない。同時期にテナックスII用にも広角オルトメター4,5/2,7cmが供給されている。


    Herar 3,5/3,5cm (1938)
    Biometar 2,8/35 (1950)

     群数2群とひたすら界面反射を忌避して企図された3番目の35ミリレンズ。設計はジルヴェスター・フーバー。群数が少ないお陰でコーティングなしの割にはヌケが良い。2,8/3,5cmのほか、全部で9種類のヘラータイプが計画されていたが、量産されたのはこの3,5/3,5cmのみ。もっとも500ないし1000本を量産と云えればの話だが。

     西のコンタックスIIa発売に合わせて投入された東のレンズで、設計はツェルナー。ただ西独には出回らなかったと云われるので、その他の地域への輸出用だったのかもしれない。柔らかいというよりもしっとりとした描写をする。数が少ないので余り市場には出ないが、ほかの35ミリに比べても安価な部類に入る。


    Biogon 2,8/35 (1951)
    Planar 3,5/35 (1954)

     西独ツァイスのレンズで、戦前版の構成をベースにリファインされている。その理由は旧ビオゴンの後玉が大きすぎて新コンタックスには装着できなかったためだ。カール・ツァイス銘のものは余り見かけない。開放近くで四隅がひどく崩れてしまうほかは、全体的に優れたレンズだろう。特に中心部のシャープネスには目を見張るものがある。

     やはり廉価版として企図されたもので、最後に登場したコンタックス用レンズ。のちのプラナーと違って、前群に単エレメントが配置されている。新ビオゴンのようなきりっとした写りではなく、優し目の描写をする。数が少ないせいか新ビオゴンよりも中古価格は高い。


     さらにツァイス以外のメーカーから以下の4つのレンズが供給されている。このうちWニッコールは厳密にはコンタックスに適合しないが、その理由はよそで述べられている通りだ。なお、マイヤー・マクロ・プラズマット2,7/35、ソリゴール2,8/35などというコンタックス用レンズもあったようだ。

    Б.К 2,8/3,5cm (1948)
    TYPE X1 3,5/35 (1949)

     細かな経緯はどうあれ、旧ビオゴンのソ連版として1948年に登場したBKは、のちにユピテル12として実に多くの数が世に出回った。最初期のBKはその名の通りクラスノゴルスク製ビオゴンであり、一部では単にイエナ製ビオゴンの銘板を変えただけのものとも考えられている。コーティングが施されたことにより、戦前ビオゴンに比べてだいぶヌケは良くなった。

     テッサータイプの35ミリレンズとして戦後のごく一時期、パリのピエール・アンジェニューから出たもの。本家テッサーと違い、非常に柔らかな描写をする。開放ではまるでソフトフォーカスレンズだ。見た目の深度が浅く、被写界深度目盛は大して役に立たない。


    MINOR 3,5/3,5cm (1950)
    W-NIKKOR 3,5/3,5cm (1948)

     オランダ唯一の光学企業オールド・デルフトのレンズで、ライカネジマウント版も生産されている。構成はテッサータイプ、コーティングはされていない。四隅の崩れも目立つほどではなく、比較的優秀なテッサー型35ミリレンズと云える。数はコンタックス版、ライカ版ともに非常に少ない。

     ニコンS用として用意された35ミリレンズ。これもテッサー型で、恐らくはエルマー3,5/35を参考にしたのだろうが、なぜツァイスを範にとっていた日本光学がビオゴンを模倣しなかったのか、興味を惹くところだ。開放からシャープで当時としてはコントラストの高い優れた描写をする。




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    Text and Photo : (C)2005 Takanashi_Yoshitane.
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