各種レンズによる作例集

　レンズインプレッションとゆうのはクラシックカメラブームなるものが漸く鎮静化を見始めた昨今でも、しぶとくいろんな媒体でいろんなタイプの人がいろんな展開を続けていて、依然衰えを見せてはいないようだ。
　昔の（ひょっとすると今も）ＳＦ作家が夢想したように、人間の感受性も含めたこの世界のあらゆる事象を数式で表すことは、幸か不幸かいまのところ不可能であるから、チャートと表の数値やグラフからレンズのポテンシャルは判っても、実際にどんな働きをするのかはふつうの人には雲をつかむような話だし、ましてそれが自分の感性にしっくりくるかどうかなんて、これは無責任な云い方だが撮ってみなきゃ判らない。
　アマチュアにとっては、いいレンズだからいい写真が撮れるのではなく、いい写真が撮れたからいいレンズなのだ、という思想に与するわたくしとしては、気になったレンズがあったらとりあえず使ってみなさい、使って気に入らなければ市場に帰してやりなさい、と云い放ってもちろん責任をとるつもりもないが、じゃあなんのための作例集かとゆうと、要は自己満足に過ぎないのだってことは、誰も声を大にして云わないけれど、みんな気づいてることなんじゃないのか。
　なによりクラシックレンズには、それが当時どんなに精密に製造されたとしても歳をふることで個体差が生まれるのだから、作例が良かろうが悪かろうが、それはアタリハズレの一言ですむ範囲のことかもしれないし、そうでないかもしれない。だからもう一度無責任に助言するが、気になるレンズがあったらとりあえず使ってみることだ。あとはあなたの愛と気力の問題である。

　わたくしは蒐集もするフォトグラファーではないけれど、写真も撮るコレクターでありたいと思っているので、所有するすべてのレンズはもとより、とりわけ稀少なレンズでも惜しげもなく実用に振り回す。もちろんそうは云っても、まるで使い物にならないレンズは扱いに困るし、気に入ったレンズの出番のほうが多いのは否めない。だいいちわたくしはレンズグルメなどではなくハコ好きなのだからして、装着するカメラに愛を感じないことにはいかに銘玉と謳われようがまるで使う気にもならんのである。