● F値について

  絞り値とかF値と呼ばれているものは、レンズの有効口径を焦点距離で割った数(口径比)の逆数である。昔はレンズの口径比を1:3,5のように表記した。この後ろの数字(3,5)が絞り開放でのF値に相当する。有効口径は絞りを絞ることで小さくなるから、いつ頃からかは知らないけれど、今では絞り値としても利用されているわけだ。ちなみにウアライカなどごく初期のカメラレンズには、絞りの直径が表示されていた。

 ところで有効口径とは入射瞳径に同じで、レンズを前(被写体側)から見たときの絞りの大きさのことだ。だから焦点距離50ミリのレンズでF1なら、入射瞳径は50ミリになるし、F2なら25ミリだ。もちろん表記の焦点距離と実焦点距離は厳密には異なることが多いから、ノクチルクスの入射瞳径がぴったし50ミリだとは限らない。

D:L=1:F

 さて、F値が倍になる(口径が半分になる)と、面積は長さの2乗に比例するから、レンズを透過する光の量は1/4になる。露光量の計算は4倍または1/4ごとよりも2倍もしくは1/2ごとのほうがやりやすいので、基本的にF値は約1,4(2の平方根)倍で並んでいる。つまり、F値が約1,4倍になる(有効口径が1/1,4になる)と、光量は1/2になるということだ。

 このF値の表記には国際式と大陸式とがあって、現在は国際式に統一されている。古いライカのレンズなどは大陸式表記だ。

 国際式の並びは、
1-1,4-2-2,8-4-5,6-8-11-16-22-32-45-64-90
となっており、また大陸式は、
1,1-1,6-2,2-3,2-4,5-6,3-9-12,5-18-25-36-50-72-100
となる。

 大陸式のF値は光量で云うと、一番近い国際式F値の1/3減に相当する。例えばF6,3はF5,6+1/3(この場合の+1/3とは実数のプラスではなく、1/3倍増しということだ)になる。レンズの開放F値は上記の数列から外れていることがあるので、代表的な開放F値を補正係数で表しておく。

 なお、戦前のコーティングしていないレンズでは界面反射の影響があるから、リバーサルで撮るときにはそれをも考慮する必要がある。すなわち1面につき5%の光量ロスとして、ズマールなどの4群構成なら約34%(1/3絞り分)、テッサーなどの3群構成であれば約26%(1/4絞り分)、出た目通りだと露出アンダーになる。もちろん、TTL測光では関係ない。

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